研究概要 |
ネパールヒマラヤのテクトニクス,生物相,気候の変遷を明らかにするため,この研究では主にシワリク層群とカトマンズ盆地の堆積物の磁気的・堆積学的解析を行った。 1. 東西600kmの範囲にシワリク層群のうち,7つの河川セクションのデータと新たに分析したTinau北部(約1,550m)の古地磁気データを取りまとめた.その結果,この地層の年代スパンは16〜1Ma,堆積速度は25〜65 cm/kyr,そして10.9〜9.7Maと5.2〜3.6Maの二つの堆積ピークを確認した。特に,10.9〜9.7 Maのピークは高ヒマラヤ結晶岩帯の上昇とそれに伴う侵食作用とモンスーンの強化に伴う堆積物供給の増加,または盆地の埋没等の総合的な結果と思われる。 2. 地シワリク層群の粘土・シルト質堆積物の磁気ファブリックは主に圧縮応力場を反映し,10cc程度のサンプルでも磁気リニエーション(E-W〜W-SE)がtectonic transport方向と直交するため,サイスモテクトニックな指標となりうる。 3. カトマンズ盆地のLukundolの露頭上部でB-M境界(約0.78Ma)が確認されており,堆積スパンが約0.7〜1.1Maであることを明らかにした。Lukundol層(主に粘土・シルト)とItaiti層(主に砂礫)の境界は約0.96 Maで,その時期にはMahabharat山地の上昇が活発だったと思われる。 4. 同盆地のGokarna層のDhapasiセクション下部の黒色粘土・シルト中に磁気エクスカーションが確認され,それをLaschamp Eventと対比した。C14年代も考察し堆積時期が約45〜34kaと推定した。プロデルタ堆積物は粒度分析結果から淘汰が悪く多重モードを持つシルトからなり堆積物の混合やリワークを反映していると推定される。
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