研究概要 |
東北日本の背弧域は日本海拡大に伴って伸張変形を被り、その後鮮新世以降、現在も短縮変形が進行している。本研究では主として反射法地震探査データを用いて、東北日本背弧域のバランス断面を作成し、定量的に中新世の伸張変形量とその後、現在にいたるまでの短縮変形量を明らかにすることを目的として研究を進めた。岩手県の北上低地帯地域の地殻構造について、資源探査によって得られている反射法地震探査データや、平成15年に地震研究所が取得した反射法地震探査データの再処理を行い、中新世における地殻の伸張量と、鮮新世以降の短縮水平歪みを求めた(Kato et al., 2006)。短縮変形量を明らかにするために、これまで地震研究所が東北日本の活断層・活褶曲帯で実施した反射法地震探査のデータを再処理も含めて取りまとめた。検討を加えた地域は、横手盆地東縁断層帯(佐藤ほか,2006;楮原ほか,2006)、北上低地西縁断層帯(蔵下ほか,2006)、新庄盆地東縁断層帯(佐藤ほか,2006),庄内平野東縁断層帯(加藤ほか,2006)などである。 これらの反射断面の検討によって、日本海側の背弧海盆を充填した堆積層は、中新世の泥岩中にデタッチメント断層が発生し、薄皮テクトニスクスの様式で変形していることが明らかになった。また、これらの断層の深部延長は、正断層の再活動である中~高角の基盤岩中の逆断層となって、thick-skinnedテクトニクスの様式をとっている。東北日本は全体としては日本海拡大時の伸張変形がよく保存されている。石油公団の反射法地震探査データの解析も含めて、本庄-水沢断面で東北本州弧リフト系での伸張量を見積もると約37kmとなり、反転短縮水平歪み量は約14kmとなる。短縮歪みのほとんどはリフト系西部で消費されており、太平洋側のリフト系東部では短縮水平歪は1kmほどである。
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