研究概要 |
本研究は舞鶴構造帯に沿う大規模横ずれテクトニクスの実体解明を目的として,テレーンアナリシスに基づく舞鶴帯の拡がりの確定,舞鶴帯に分布する花崗岩類の起源,舞鶴帯のメランジュ様構造形成の運動像と変形時期の解析を行った.また,本研究に資するためEPMA年代測定のシステム確立をめざした. 1)JEOL JXA-8200を用いたEPMA年代の測定システムを確立した. 2)九州東部朝地変成岩地域の荷尾杵花崗岩のSHRIMP年代の測定結果と朝地変成岩の変成作用および周辺地質体の地質構造を総括し,西南日本の地体再配列が白亜紀前期に起こったことを明らかにした. 3)広島県北西部吉和地域の詳細な地質図を作成して構造解析を行い,この地域の舞鶴帯が高圧変成岩や非変成整然層からなる異地性岩塊を含むメランジュ帯であることを明らかにした. 4)舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯の圧砕花崗岩類のSHRIMP年代とCHIME年代の測定結果,および周辺地体の地質構造を総括し,舞鶴帯北帯がロシア沿海州のハンカ地塊に対比可能であることを明らかにした。 5)島根県江津地域の変成オフィオライトと弱変成田野原川層が,それぞれ,舞鶴帯の夜久野岩類と舞鶴層群に対比されることを明らかにした.また,オフィオライト中の圧砕花崗岩がハンカ地塊と北中国地塊の衝突帯に位置するYanbian地域の後変動時A-type花崗岩に対比可能であることを明らかにした. 6)舞鶴帯に分布するトリアス系の砂岩から分離した砕屑性ジルコン・モナザイトのSHRIMP年代とEPMA年代を測定し,東部地域がハンカ地塊を,西部地域が北中国地塊をそれぞれ後背地に持つと推定した. 7)以上の成果を総括し,ジュラ紀〜前期白亜紀頃に,舞鶴構造帯と飛騨外縁帯に沿って500km程度の右ずれ変移が起こったと結論した.
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