研究概要 |
本研究では,中央構造線(MTL)沿いの花崗岩類として,高遠花崗岩,新城トーナル岩,さらに淡路島の野島花崗岩を,さらに伊豆弧の衝突域の花崗岩類として丹沢トーナル岩体を選び,それらの花崗岩中の石英粒内に存在するヒールドマイクロクラック(丹沢の場合はシールドマイクロクラックも)の三次元方位分布について,ユニバーサルステージを利用して測定し,σHmaxの方位を復元した.その結果,以下の成果が得られた. 高遠花崗岩では,MTLがN-S走向をもつ本地域におけるσHmax方位は,ばらつきが大きいものの,E-Wが優勢である.新城トーナル岩では,MTLがNE-SW走向をもつ本地域におけるσHmax方位は,概ねNE-SE方向を示し,ほぼMTLと平行でであった.一方,すでに淡路島北部の一部求められていた野島花崗閃緑岩のヒールドマイクロクラックを,淡路島北部全体で求めた結果,従来の結果(N-S)とは異なり,MTLとほぼ平行な,E-Wが卓越することがわかった. 以上から,高遠花崗岩を除くMTLから比較的近い地域における花崗岩類中のヒールドマイクロクラックから求めたσHmaxは,MTLにほぼ平行であり,そのことはMTLの折れ曲がりが,ヒールドマイクロクラック形成時の後に生じたことを示唆する。しかしながら,高遠花崗岩ではその傾向を示さず,さらにMTLから離れた土岐花崗岩でも,NNW-SSE走向のσHmax方位が復元されていることから,MTLの折れ曲がりを議論するために,さらなる検討の必要が残された.丹沢トーナル岩体については,広域にヒールド・シールドマイクロクラックを測定した結果,ほとんんど例外無く両者ともNNE-SSW方向のσHmaxが復元された,このことは,丹沢トーナル岩の衝突(5Ma)以降,現在に至るまで同じ古応力場を示している.この方向は伊豆弧の衝突方向(NW)とは斜交するが,このことは衝突の中心に対してσHmaxのトラジェクトリーが放射状に分布していると考えることにより,うまく説明できる.
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