研究概要 |
地球・生物間の相互関係の縮図である「礁生態系」は,とりわけ温室期に,その性質を大きく変容させている.本研究計画では,各時代を代表する温室期生物礁を研究対象に取り上げた.さらに,現世生物礁の代表的な造礁要素である六射サンゴ類も取り上げ,その「増殖・成長様式」を調べた. 1.下部オルドビス系生物礁の研究では,系統的に先駆的な「大型骨格生物礁」ならびに「ストロマトライト礁」の構成的な特性に注目した.各礁の「地域的・時代特異的な生態遷移」や「大型骨格生物礁と微生物礁の共存原因」を明らかにした. 2.下部デボン系生物礁の研究では,温室期に特徴的な大型骨格生物と微生物に注目し,それらの「生物間相互作用」の観点から,「礁石灰岩の即時的な形成メカニズム」を解析した.その際,生息場の微環境のどのような変動が,生物間相互作用にどのような変化をもたらし,その結果が石灰岩中にどのように記録されるのかに注目した。そして,礁石灰岩の形成を,構成要素の「形成作用」,組織や構造の「構築作用」,「破壊作用」の観点から総括した. 3.最下部トリアス系(Hindeodus parvus帯)の研究では,温室期に特徴的に生じた「ペルム紀末の生物絶滅事変」との関連から,「スロンボライト礁の形成様式」を解析した.揚子地塊で,(1)ペルム/トリアス系境界の接触様式が不整合関係であること,(2)微生物礁の構造や組織が系統的に変化すること,(3)δ<13>^C値変動(とりわけ負異常の時期とその規模)の解析やGSSPでの当該データとの広域対比から,当時の海洋環境変遷に関する高解像度の復元を行った. 4.現世六射サンゴ類の解析では,「無性増殖・成長様式」や「環境(とくに悪化時)への呼応様式」に関する基本的な現象を発見した. 上述の検討や結果は,「地球生物環境の自己創出過程」や「現世地球生物環境の実態」の解明に対しても意義が大きい.
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