研究概要 |
1.北海道から発見されているマンモスゾウ10点のうち,年代が測定されていない7点についてAMS法による放射性炭素年代測定を行った.その結果,マンモスゾウの生息年代は,約4.5〜1.6万年であることを明確にした.また,北海道においては約3万年前にナウマンゾウが生息していたことから,2つの動物群の入替りが起こっていることを明らかにした. 2.従来おもに石狩低地帯の花粉分析結果から北海道の植生変遷史がまとめられていたが,これに補足するデータを追加し,サハリンと北海道の後期更新世の植生変遷史をまとめた.その結果,マンモスゾウが生息していることには草原が広がり,ナウマンゾウが生息していたころには落葉広葉樹林が広がっていたことがさらに明確になった. 3.北海道から発見されている旧石器遺跡をこれまでの石器製作技術論のみから個々の遺跡を記載する方法ではなく,地球科学的手法を用いて再検討した.その結果,不定形剥片石器,細石刃石器群とSpfa-1火山灰(約4.5-4.0万年前)やEn-a火山灰(約2.2-1.9万年前)との層位関係が明らかになった. 4.以上のことを総合し,環境変遷と旧石器遺跡との対応関係を元に多様な石器群の形態解析と行い,自然と人類の相互作用を具体的な例証に基づいてまとめた.すなわち,約2.2-2万年前の不定形剥片石器,細石刃石器群は寒冷な気候下,広がった草原にマンモスゾウが生息するような環境で作られた.一方,約3万年前と考えられる小型剥片は温暖あるいは冷涼な気候下,落葉広葉樹の森にナウマンゾウが生息するような環境で作られた.以上のことをまとめて国際誌で報告した.
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