研究概要 |
前年度に引き続き南極で発見した限石を中心に分析・研究を継続した.申請者が発見した南極限石7,000個余りの中で,エコンドライト隕石に分類されたものはかなりの数に上る.このエコンドライト隕石の中で,HED隕石(ホワルダイト,ユークライト,ダイオジェナイト隕石)に分類される約30個の隕石について,岩石学的(鉱物組み合わせ,岩石組織や全体的な特徴)及び岩石化学的な研究を行い,個々の隕石の特徴を明らかにした.更に典型的なHED隕石として従来からよく知られている隕石については,世界の著名な博物館から借用し研究に使用した.HED隕石は小惑星の一つである4Vesta母天体上で形成された"岩石"である.このうちダイオジェナイトはより深部で.またユークライトは表層で,マグマから形成された一種の火成岩である.一方.ホワルダイトはダイオジェナイトとユークライトの混合物:つまり母天体上でのインパクトにより混合したもの,つまり,角礫岩であると言われている.従来知られているホワルダイトはすべて"角礫岩"の組織を呈し,この考えを支持している.本研究では"角礫岩"組織を示さないマグマ起源そのものの完晶質ホワルダイト隕石の同定にあり,この可能性のあるエコンドライト隕石について分析・研究を進めた結果,唯一完晶質ホワルダイト隕石を確認できた.現在世界中にある隕石の中で完晶質ホワルダイト隕石は,本研究より同定・分類された一個のみである.
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