研究分担者 |
芳川 雅子 京都大学, 大学院・理学研究科, 教務補佐員 (00378605)
高橋 俊郎 海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 研究推進スタッフ (20392946)
柴田 知之 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教 (40332720)
小屋口 剛博 東京大学, 地震研究所, 教授 (80178384)
鎌田 浩毅 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80303791)
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研究概要 |
阿蘇火山の活動は,約30万年前以降の4回の大規模噴火サイクルと,その間の多数の小規模噴火により特徴付けられる.本研究では,2-3万年の間をおいて大規模噴火(Aso-2,3,4)を3回起こした約15万年前から9万年前の間の一連の活動に関して,噴出マグマの岩石学的性質の変化を明らかにし,マグマ供給系の進化過程を明らかにすることを目的とする.本研究では,斜長石斑晶の微小領域同位体分析とともに,様々な地球化学的および岩石学的データをもとに,マグマ供給系の過程とその進化について考察を行い,以下のことが明らかになった. 阿蘇火山の大規模噴火は,大局的に上部に珪長質マグマ,下部に苦鉄質マグマが成層した層状マグマ溜りからの噴火である.マグマ生成は,各大規模噴火ごとに別過程として起こり,各々の大規模噴火では,珪長質マグマと苦鉄質マグマは分化関係がないにも関わらず,同一の起源物質から生成している.これは,マグマの起源物質をハンレイ岩とし,苦鉄質マグマは,ハンレイ岩の高部分溶融メルトが,分離後結晶分化を起こしたとして,珪長質マグマは,ハンレイ岩の低部分溶融メルトが,分離したマグマであるとして,説明できる.このハンレイ岩の溶融によるマグマ生成は,マントルで生じた高温マグマが上昇して下部地殻を加熱して起こった可能性が高い.この場合,上に述べた苦鉄質マグマと珪長質マグマの部分溶融の程度の差は,苦鉄質マグマは熱源となるマントルマグマ近傍で生成し,珪長質マグマはマントルマグマから離れた場所で熱伝導により加熱されて生成したと解釈される. 阿蘇火山のマグマは,時間とともに系統的にマグマの性質が変化している(SiO2量に対するK20量の減少,温度の低下など).これらの進化は,時間とともにマグマ発生領域である下部地殻の含水量が時間とともに増加したと考えることにより統一的に説明が可能である.
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