研究概要 |
本研究で我々は,加熱AFMその場観察法を確立し,鉱物の溶解速度に対する温度効果とpH効果を同時に現すことを目指した.その結果,以下のような新たな知見が得られた. 1.AFM液中観察での微粒子の固定法は,PEI法が有効であり,温度50℃においてはpH 12程度まで使用可能である. 2.液中セルに流す溶液の流速は,約10 μl/min以下が望ましい. 3.走査法は,CMAFM法,TMAFM法の両者ともに可能であるが,特に前者の場合,高温,高濃度溶液の実験時には試料-探針間の触圧に十分注意する必要がある. 4.室温〜50℃における白雲母とスメクタイトの溶解反応は同じであった.両鉱物の溶解は端表面のみで起こっており,端表面積で規格化した溶解速度が本質的な溶解速度である.一方,壁開表面は見かけ上溶解反応に寄与しておらず,総表面積で規格化した溶解速度は粒子あるいはピットの大きさに依存して変動する. 5.両鉱物の溶解の活性化エネルギーはほぼ等しい(pH 11.8で約54 kJ/mol,pH 11.2で約50 kJ/mol).また,これまでの研究で示されていたカオリナイト溶解における活性化エネルギーのpH依存性が,白雲母やスメクタイトでも認められた.これらのデータから,2八面体型層状珪酸塩鉱物の溶解速度の温度効果(20〜80℃)とpH効果を同時に示すモデル溶解速度式を求めることに成功した. 6.溶解の活性化エネルギー,反応表面,溶解速度の異方性などの結果を総合的に判断すると,アルカリ性条件下における室温〜60℃での2八面体型層状珪酸塩鉱物の溶解の律則段階は,端表面に存在するSi-O-Al結合(およびSi-O-Al_2結合)の切断であると考えられる.
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