研究課題
基盤研究(C)
近年、南極氷床や砂漠などから、月を起源とする隕石が数多く発見されている。アポロ計画やルナ計画により持ち帰られた月試料が月の表側の赤道付近に限定されていたのに対し、これらの隕石は月の裏側や深部など、未探査領域からのサンプルである可能性が高く、「月全球レベルでの地殻進化」を理解する上で重要な鍵として注目されている。しかし、これらの月隕石の殆どが、起源の異なる岩石片や鉱物片の寄せ集めである多種混合角礫岩であり、更に角礫化の際の2次的な変成により生成時の放射壊変系が乱されているなど、火成活動に関する正確な年代情報を引き出すことが困難とされてきた。平成17-19年度、比較的容易に入手することのできる玄武岩質月隕石8ヶ のU-Pb年代をイオンマイクロプローブSHRIMPを用いて精査し、これまで未知であった未探査領域の火成活動を次々に明らかにした。これらの結果は、概ね29-39億年の年代を示し、「月の主要な火成活動の時期は30-39億年」とするアポロ計画やリモートセンシング観測によるクレーター年代学の結果と調和的である。一方、KREEP成分の少ない43.5億年の火成活動の痕跡をKalahari 009隕石中に発見した。この結果は、従来考えられていた月の火成活動時期(約29〜39億年)を約4億年も遡るものであり、月形成直後の数億年内には月面で既に火成活動が起こっていたこと、月のマグマオーシャンの最終固結物質であるKREEP層が月全球規模では発達しなかった可能性、厚いレゴリスに覆われている知られざる太古の「海(cryptomare)」の存在、などを示唆するものであり、これまでの「月の進化モデル」の再考を促す重要な知見となった。(例えば、マグマオーシャン固結後5億年たって火成活動が活発になるというモデルや、KREEP成分を熱源とするモデルでは説明できない)
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