研究概要 |
本課題遂行により,一般化した量子最適制御シミュレーション法の開発に成功した.それを使って目的の分子内量子もつれの生成・制御法を提案するとともに,量子もつれを利用した新規分光法を開発できた. 分子内量子もつれの生成制御においては,多くの自由度の間の相互作用を波動関数の位相も含めて制御し目的の状態を生成する.実験的には制御は閉ループ(最適制御)法がすでに確立している.これに対応する理論解析は最適制御シミュレーションであるが,フィードバック(非線形相互作用)を含むため数値解析は難しい,本課題では高速・高精度(精度は計算機の数値精度限界で決まる)でかつ,非常に一般的な数値解法アルゴリズムの開発に成功した.これを適用し例えば,円錐交差を含む2次元・2電子状態を取り上げ,強い非断熱相互作用の存在下においても,多数回の電子状態遷移を通した波束整形の利用により,分子固有の相互作用をアクティブに制御し,もつれの度合いを調整できることを示した.また,表面吸着分子などの今日散逸系においてさえも制御可能であることを示した.後者は,量子デバイスの素子化に向けた知見を提供する. 一方,新規の分光法提案においては,量子もつれが本質的に重要になる量子演算に着目し研究を行った.量子もつれを生成する基本演算であるCNOTおよび量子もつれを利用する演算として量子フーリエ変換を取り上げ,これら演算子を対角表示する状態を量子ビットとできることを明らかにした.更に,現在の時間分解量子干渉分光法を若干の改良し,位相ロックとパルス波形整形装置とを組み合わせれば,非常に高感度に演算結果を測定できることを数値シミュレーションで明らかにした.また,幾何位相効果を利用した分子内量子もつれの制御および新規の分光法の理論提案を行った.振動モード間量子もつれを解離生成物間の分岐比の違いとして検出するため高感度の分光法である.
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