研究概要 |
剛直な構造をもち、空間的に大きく広がった2',3',4',5'-テトラフェニルフェニル基を有する配位子の機能を見出し明らかにした。この置換基を有するホスフィン系、窒素系、酸素系の配位子を合成し、各種金属と組み合わせ、触媒反応への効果を試した。そこで見つけた新機能を生かして従来にない新反応、高い触媒活性、高い選択性を有する反応を開発を目指した研究を展開した。具体的には、今年度は、テトラフェニルフェニル基を有する配位子を用いた大きな不斉環境による立体選択性向上効果について調べた。テトラフェニルフェニル基は1.3ナノメートル程度の広がりを有している。均一系錯体触媒の分野で広く用いられている小分子性の配位子よりは大きく、デンドリマーなど超分子系の分子よりは小さい。小さい配位子ではみられなかった機能の発現が期待できる一方で、合成しやすい利点もある。実際には、成果として軸不斉ビフェノール化合物、2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビアリール類のビニルエーテルの不斉加アルコール分解について検討し、テトラフェニルフェニル基を有するジアミン配位子が、有していない配位子に比べて、選択性で約1.3倍、反応性で約2倍向上させる効果があることを見出した。また、2-ナフトール類の酸化的不斉カップリング反応で、2,2'-ジヒドロキシー1,1'-ビナフトール類の不斉合成は行えるが、2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビフェノール類は反応性が低いため酸化カップリングには適さず不斉合成が困難な化合物だっただけに、成功の意義は大きいと考えている。この研究をさらに展開し、ホスホリル基やスルポキシル基を有する軸不斉化合物の速度論的光学分割を行った。続いてこの反応を応用して、リン原子上にキラリティーを有する化合物の不斉合成、速度論的光学分割を行った。
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