研究概要 |
平成17年度の本課題研究において、本研究代表者は独自の方法により、1,2-ジチエニル-3,4-ジホスフィニデンシクロブテン(DPCBT)のチオフェン環のヨウ素化に成功した。そこで平成18年度研究では、ヨウ素化したDPCBTの薗頭反応について検討し、π系を拡大した種々の誘導体やその錯体を合成することができた。さらに、ピリジル(エチニル)基やビピリジル(エチニル)基を導入した、DPCBT誘導体を合成することができた。これらは、一つの分子内にsp^2混成型リン原子による配位部位とsp^2混成型窒素原子による配位部位を併せ持つ、興味深い配位子である。また非ベンゼン系芳香族置換基であるアズレニル基を有する初めてのdpcb配位子を幾つか(置換位置が異なる)合成した。アズレン核は、比較的反応性が高いため、新たなスペーサーとしての利用が期待される。このため、アズレン環にピリジル基などの複素環を導入することについても検討した。さらに新規両親媒性スペーサーの開発についても検討した。即ち、興味深い両親媒性DPCB高分子量化合物合成のためには、DPCB自体を両親媒性にするという方法も考えられるが、より融通性がある方法はスペーサー部分を両親媒性とすることであると考えた。ここで、長鎖アルキル鎖の鎖長の制御が容易になるように、チオフェン環の利用を考えた。その結果、1,4-ビス(3-チエニル)ベンゼンを足掛かりとして、主要合成中間体を順次合成、続いてピリジン系配位子部分の連結を含む種々の誘導体の合成に成功して、L4-ビス(3-チエニル)ベンゼン系両親媒性スペーサーの基礎を固めることができた。
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