研究課題
基盤研究(C)
本研究ではジベンゾシクロオクタテトラエン(DBCOT)の桶型の構造と室温溶液中で容易に環反転する性質に注目して、分子内にDBCOT二分子を縮環した化合物を合成した。この化合物はantiが体とsyn体の二つの配座異性体が室温溶液中で異性化し、このうちsyn体がその空孔内にゲスト分子を選択的に包接するピンセット型のホスト分子としての機能を有することを明らかにした。そしてその分子包接挙動において、分子認識部位にあたるベンゼン環に電子供与性置換基であるアルコキシル基を導入したことでDDQなどの電子欠乏性の分子を包接する機能を有することを明らかにし、ゲスト分子包接の際、アルコキシル基の寄与が大きいことを示唆する結果を与えた。また、そのアルコキシル基においてもメトキシ基からエトキシ基へとそのアルキル鎖を一つ伸長させただけで包接能の向上が見られることを確認しており、ホスト分子のアルキル鎖がゲスト分子の包接に有利に働くというホストゲスト化学の観点から非常に興味深い性質を持つホスト分子であることを見出した。さらに、分子認識には直接関係しないシクロオクタテトラエン上の置換基をニトリル基からホルミル基に変えるだけで、電子吸引性の違いによる効果から包接能の向上も見出しており、今回合成したピンセット型化合物の分子認識挙動の詳細を幅広く明らかにしている。今後の課題としてはより多くのゲスト分子を包接できるよう、その分子認識部位にあたるπ平面の拡張が望まれる。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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