研究概要 |
レニウム(1)トリカルボニルジイミン錯体は弱い還元剤の存在下で、二酸化炭素を選択的に-酸化炭素に還元する光触媒として働くことが知られている。この様な反応の2電子還元触媒として、多核金属錯体が注目されている。本研究では触媒活性サイトを構造規制した新奇な配位子を設計し、これを用いて二核錯体の合成を試みた。 1. 2つの新奇配位子,bdpbiaH_2=1,8-bis(dipyrido-[2,3-e:2',3'-g]-1H-benzoimidazole)anthracene and bdpbibH_2=1,8-bis(dipyrido-[2,3-e:2',3'-g]-1H-benzoimidazole)benzeneは2つの金属核が互いに近傍に接近し、二酸化炭素のような低分子を2つの金属核で捕捉できるように設計された。これらの架橋配位子を用いてレニウム(1)およびルテニウム(2)二核錯体を合成した。配位子および錯体は元素分析、質量分析等により同定・確認した。 2. これらの架橋配位子は興味深いことに室温で長波長部に幅広い発光を示した。これは配位子中で2つのフェナンスロリン環が接近しているため分子内エキシマーからの発光と思われる。また、二核金属錯体を形成した場合、紫外・可視吸収スペクトルや発光スペクトルなど各種分光測定等により、2つの金属核間には強い相互作用は働いていないことが分かった。 3. 密度汎関数法による構造最適化計算により両レニウム金属中心間は二酸化炭素などの分子を挟み込むのに十分な距離(7〜11A)があることが分かった。また、二酸化炭素の光触媒機能は対応する単核錯体と同程度で協同效果は見られなかった。 以上の成果の一部は昨年の第20回配位化合物の光化学討論会および第57回錯体化学討論会で報告した。また、学術雑誌への投稿も準備している。
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