研究概要 |
本研究は,光照射,温度や圧力,電位,プロトン濃度といった外場環境の変化に応答して構造や電子状態を変化させ,発光波長可変性を示すような発光性金属錯体の開発を目指して,3年間にわたり実施したものである。 その結果,ジフェニルホスフィノベンズアルデヒド,アルキルチオベンズアルデヒドとヒドラジノピリジンあるいはヒドラジノキノリン,および,ベンゾイルヒドラジンあるいはピコリン酸ヒドラジドを反応させて得たヒドラゾンを配位子とするパラジウム(II),白金(II)錯体が,プロトン濃度の変化にともなって可逆的に配位子上のプロトンを脱着し,吸収および発光スペクトルの可逆変化を示すことを見出した。また,これらの錯体が,光照射により新たな光反応性を示すことも明らかにした。一方,対応する配位子を有するルテニウム(II)錯体では,プロトン濃度の低下が錯体の酸化還元電位を低下させ,これにともなってルテニウム(III)へと酸化が進行することを見出した。 このような現象は,まさに外場環境の変化が金属錯体の電子状態の変化へと変換された結果であり,意図していた新しい発光性金属錯体の開発へと結びつけることができた。したがって,本研究は概ね良好に進展し,今後の展開が期待できる成果をあげることができたと考えられる。今後は,さらに多様な金属へと組み合わせを拡張し,配位子にも修飾を加えるた研究の展開が可能と思われる。
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