研究概要 |
本研究は、新規水素貯蔵材料として注目されている三元系軽元素(low-Z)水素化物を対象とし、外熱式ダイヤモンド・アンビル・セルによる高温高圧条件を用いて、新規高密度low-Z水素化物の合成を試み、その反応過程を高圧その場観察するものである。とりわけ、解臨界状態にある高温高圧水素を用いて、LiBeH3など合成の困難な新規三元系low-Z水素化物の合成を目指した。 最終目標であるLiBeH3の合成については、約7GPa, 300℃の水素雰囲気中でLiH+Be混合粉末を反応させたところ、新たな水素化物の生成が高圧ラマン散乱により確認された。しかし、高圧X線散乱で明瞭な回折ピークを示すほどの生成物は得られていない。今後、高温高圧条件の向上により、合成反応の促進と生成物の結晶性の向上が期待される。 関連研究として、非晶質BeH_2, LiBH_4, LiALH_4, NaAlH_4の高圧挙動について、高圧下におけるX線回折、ラマン散乱、赤外吸収、ブリュアン散乱などを用いて調べた。非晶質BeH_2は約50GPaでBeH_2分子の重合が示唆された。LiBH_4については、1, 16, 30GPaでの新たな高圧相転移が見いだされ、高圧X線回折により各高圧相の構造が明らかとなった。なお、30Gpaにおける構造は常圧のNaBH4の構造と一致し、アルカリ金属ボロハイドライドの高圧構造変化のシーケンスも明らかになった。2種類のアラネートLiALH4とNaAlH4については、それぞれ複数の高圧相が見いだされたが構造の解明には至らなかった。なお、NaAlH4は13GPa、約280℃で未知の高温高圧相へと相転移することが確認された。これは、数百℃程度の温度範囲においても、高圧下では未知なる三元系low-Z水素化物が多様に存在することを示唆しており、既存のlow-Z水素化物についても、広範な高温高圧研究により興味深い新規化合物が得られる可能性がある。
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