研究概要 |
簡便分析試薬となる、新規なデンドリマー型蛍光性化学センサーを合成し、その性質について調べた。分岐鎖にアミノ基とエステル基をもつTG0,TG1,NG1,NGIは、Al^<3+>,Fe^<3+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>を添加すると、長波長側の蛍光が減少し、340nm付近のナフタレン環由来の蛍光が増大した。これは、3級アミンとナフタレン環との分子内相互作用による分子内エキサイプレクスが、3級アミンに金属イオンが配位されることで、形成されなくなったためである。TG1の部分骨格はNG0と類似の構造のため、金属イオンの補捉に関する選択性はよく似ており、Zn^<2+>に対して最も強い蛍光を示した。一方、NGIではAl^<3+>に対して最も強い蛍光を示した。TG1,NG0,NG1の蛍光強度のモル比プロットから、NG0は金属イオンと1:1錯体を形成し、TG1は少なくとも2個以上の金属イオンと、NG1は段階的に金属イオンを補捉していく様子が示され、分子サイズが大きくなるほど多くの金属を捕捉できることが示唆された。分岐鎖にアミノ基とアミド基をもつN8,N4,N1は、N8とN4で、金属塩の添加によりナフタレンの発光極大(340nm)の蛍光強度の増大が見られた。N4は、試料濃度に対する金属イオンの濃度が数倍のところで蛍光強度が一定となり、金属イオンの種類による蛍光強度の違いは殆ど見られなかった。一方、N8では、Mg^<2+>,Ca^<2+>,Ba^<2+>,Co^<2+>,Ag^<+>に対してはN4と同様に試料濃度に対する金属イオン濃度が数倍のところで蛍光強度はほぼ一定となったが、Zn^<2+>,Cd^<2+>,Al^<3+>,Ni^<2+>に対しては、金属塩を更に添加すると蛍光強度はなだらかに増加し続け、分子サイズが大きくなることで金属イオンの選択性が向上することがわかった。
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