研究概要 |
中央大学,理工学部校舎(後楽園)で,粒径別(<2μm,2-11μm,>11μm)に大気粉塵(以下APMと略す)を1ヶ月ごとにサンプリングし,APM中の主成分元素(Na,Mg,Al,Ca,Fe,Kの6元素)をICP発光分析法で測定し,微量元素(Li,Be,Ti,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,As,Se,Mo,Cd,Sb,Ba,Pbの17元素)をICP質量分析法によって測定した。過去13年間の長期モニタリングの結果より,<2μm以下の小さな粒径のAPM中に有害汚染元素(Sb,Cd,Se,Pb,As)が多く濃縮していることが明らかとなった。特に,Sbは最も多く濃縮していた元素である。Sbの起源として可能性のある物質中のSb濃度を測定しその起源を考察したところ,自動車のブレーキパッド,化学繊維,プラスチックなどに高濃度のSbが検出された。サンプリングした試料をフィルターごとPTFE製容器に入れ超純水40mLを加え,フィルターが完全に超純水に浸透するようにした。恒温振とう機を用いて,恒温槽温度25℃,振とう回数120回min^<-1>の条件の下,24時間抽出を行った。 その結果,主成分元素では土壌に多く含まれているFe,Al及びTiが不溶性であり,海塩粒子に多く含まれているNa,Mg及びKが可溶性であった。微量元素では人体に有害であるとされているZn及びCdの溶解性が非常に高かった。 <2μmの大気粉塵中に含まれるSbのうち,約30%が純水で抽出(24時間水抽出)することができ,その抽出液をHPLC-ICPMSを用い,水抽出液中のSbの化学形態別分析を行った。東京都心における<2μmの大気粉塵の可溶性アンチモンは,無機化合物の五価アンチモンSbO_4^<3->(Sb(V))と有機化合物のトリメチルアンチモン(CH_3)_3Sb^+-OH(TMSb^+)の化学形態で存在することが分かった。<2μmの大気粉塵中に含まれるSb(V)とTMSb^+は,それぞれ,48.3μgg^<-1>と2.37μgg^<-1>であった。
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