研究概要 |
電気化学的手法を利用しためっき鋼板上の亜鉛薄膜及びシリコンウエハ上の二酸化ケイ素薄膜の精確な評価方法を開発し,表面分析用標準物質の特性値が認証できる見通しが得られた。具体的内容を以下に記述する。1.亜鉛めっき薄膜の測定亜鉛めっき鋼板試料を混酸で分解後,マトリックス鉄を2価へ還元するためにアスコルビン酸を加え,pHを4に調整して定容した。この溶液5mLを電解セルに取り,-1.15V vs.Ag/AgC1で20分間前電解して亜鉛をつり下げ水銀滴電極に析出濃縮した。静置後,-0.7V vs.Ag/AgC1まで30mV/sの速度で電位を走査して溶出曲線を記録した。ピーク高さから求めた亜鉛めっき膜厚の測定結果は満足のいくものであり,数μm程度の亜鉛めっき膜厚が簡便迅速に高精度測定できる方法が確立できた。一方,溶液中の全亜鉛を作用電極に電着後,再溶解する際に得られる電流電位曲線の面積から電気量を求め,ファラデーの法則から亜鉛量を算出するストリッピングクーロメトリーの導入を試みた結果,μmオーダーの亜鉛めっき膜厚の絶対評価法として適用できる知見が得られた。2.二酸化ケイ素薄膜の測定シリコンウエハ表面上の二酸化ケイ素薄膜のみをフッ化水素酸希薄溶液で溶解後,モリブドケイ酸を形成させ,-1.0V vs.Ag/AgC1で10分間前電解してβ-シリコ十二モリブデン錯体をグラシーカーボン電極上に吸着濃縮した。静置後,-0.3V vs.Ag/AgC1まで50mV/sの速度で電位を走査して溶出曲線を記録し,ピーク高さからケイ素量を求めた。1〜100nmの二酸化ケイ素膜厚の測定で満足な結果が得られた。
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