研究課題
基盤研究(C)
キラル配位子交換キャピラリー電気泳動法では、銅イオンを中心イオンに、アミノ酸やその誘導体を光学分割剤に用い、主にアミノ酸類や有機酸類の光学分割に利用されてきた。我々は、ホウ酸が2分子のジオール化合物と三元複合体(ボロスピラン)を形成する性質を利用して、キラルなジオール化合物を光学分割剤とし、様々なジオール化合物を光学分割できるのではないかと考えた。その結果、1,3-ジオール構造を有するパントテン酸を光学分割できることを見いだした。この光学異性体分離のメカニズムとして、ジオール化合物の光学異性体間における光学分割剤-ホウ酸-光学分割剤に基づく三元複合体形成能の差よりは、むしろ三元複合体の形状が光学異性体分離に大きく寄与していることを明らかにした。本キラル分析法は、パントテン酸のような陰イオン性ジオール化合物だけではなく、1-フェニル-1,2-エタンジオールなどの中性のジオール化合物、さらには、光学異性体分析が困難であったポリオール化合物である単糖類の光学分割にも適用できることを明らかにした。本キラル配位子交換キャピラリー電気泳動法を実試料分析するために、高再現性をもたらすキャピラリーカラムについても検討した。調製したスルホン化キャピラリー及びアミノ化キャピラリーでは高再現性に加えて、分析時間を短縮できることが分かり、実試料分析にも応用可能であることを確認できた。今後、化学修飾キャピラリーを用い、ホウ酸を中心イオンに用いたキラル配位子交換キャピラリー電気泳動法により、精度よく実試料中の単糖類の光学異性体分析が可能になるものと思われる。
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