研究概要 |
本研究では多環式芳香族化合物に二次元展開するπ共役製面を利用して、各種金属フラグメントの配列方法の確立を目的とした.広域に展開するπ共役製面のモデルとして18π系四環式芳香族化合物であるトリフェニレンを用いて、高い置換活性が期待されるとともに多くの触媒反応の活性種であると考えられている(1,5-シクロオクタジエン)ルテニウム(0)フラグメントを導入したところ、導入方法および導入条件により、単核、二核および三核クラスター[Ru(1,5-CODI]_n,(triphenylene)(n=1-3)がはじめて生成した。これらの事実は、18π系芳香族化合物であるトリフェニレンが、6π、12πおよび18πと段階的に電子供与を行う事が可能であり,多環式芳香族化合物のすべてのπ電子が金属フラグメントとの結合に使用可能であることを実証している。また、本研究ではプロトン存在下においてきわめて容易に(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)ルテニウム(0)と多環式芳香族化合物との反応が進行し、カチオン性多環式芳香族化合物が生成し、ヒドリドとの反応により0価錯体へ誘導することも可能である事が明らかとなった。これまで合成が困難であった多環式芳香族化合物を持つ錯体が自在に合成できることが明らかとなったことから、アセン系およびアフェン系多環式芳香族化合物を配位子とする錯体を各種合成し、異なる多環式芳香族化合物を添加することにより配位子交換反応を行い、熱力学的な相対的安定性を評価した。その結果、アセン系化合物よりアフェン系化合物が安定であり、非配位芳香環の芳香族安定化が錯体の安定性に寄与していると結論した.
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