研究概要 |
BINAPの有する優れた不斉誘起能を機能性材料として組み込む観点からBINAPの簡易な誘導化が求められてきた。しかしながら,これまでその鍵化合物となるヨウ素化BINAPの報告例はなかった。我々は,はじめて,ビスピリジンヨードニウムテトラフルオロボレート(IPy_2BF_4)を用いる簡易なBINAPのヨウ素化を見出し5,5'-ジヨードBINAPジオキシドをほぼ定量的に得ることに成功した。さらにヨウ素化BINAPをビルディングブロックとして,パラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応により種々の蛍光性新規BINAP誘導体の合成を行った。具体的にはジヨードBINAPジオキシドと種々のアリールアイオダイドの薗頭カップリング反応を行い,相当するエチニルアレーンBINAP誘導体を良好な収率で得た。続いて,フェニレンエチニレン誘導体の光学特性に注目し,フェニルエチニルユニットを5,5'位の両方に1-3ユニットずつ持つ,光学活性フェニレンエチニレンBINAPジオキシドを合成し,これらのキラル有機・無機ハイブリッド材料化への検討も行った。その手法は最近我々が見出した,トリアルコキシシリル基の合成等価体であるジアリルエトキシシリル基の導入によるものであり,アリルシリル基を末端に有するアリルシリルフェニルハロベンゼンをジヨードBINAPオキシドとカップリングさせ,良好な収率で目的のBINAPアリルシラン誘導体の合成を達成した。これらのゾルゲル前駆体は,BINAPオキシドの5,5'位と末端のアリルシリル基の間に,フェニルエチニル基を1ユニットもつ化合物1,2ユニットもつ化合物2,3ユニットもつ化合物3であり,357,372,379nmに最大波長吸収を示し,いずれも385,402,412nmに強い蛍光発光が観測された。またそのときの蛍光量子収率は,順に0.77,0.95.0.92の極めて高い値を示し,キラルな機能性光学材料前駆体として利用できる。
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