研究概要 |
芳香族アミンによる開環反応において95%以上の位置特異性を示すことが見出された二酸無水物Rel[1S,5R,6S]-3-Oxabicyclo[3.2.1] octane-2,4-dione-6-spiro-3'-(tetrahydrofuran-2',5'-dione)を,それぞれ0.5当量の親水性ジアミンならびに疎水性ジアミンと順次反応させた後に脱水閉環を行うことで,種々の両親媒性交互共重合ポリイミドを得た。水溶液の動的光散乱の測定より,1)交互共重合体の集合体のサイズがランダム共重合体よりもはるかに大きいこと,2)側鎖のアルキル鎖長が増えると分子集合体のサイズが低下することの2つの知見を得た。また,分子集合体の透過型電子顕微鏡観察によりベシクルの形成を確認した。 しかしながら,これらのポリイミドはイミド化率が70から80%にとどまっていた。このことは分子集合体形成能を評価する上では問題となると考え,イミド化の反応条件を検討した結果,化学イミド化法がよいことが分かった。一方,分子量についても,これまでは数千程度にとどまっていたが,新たに2万を超えるポリイミドを与える反応条件を見出した。任意のイミド化率,分子量の組み合わせのポリイミドを用いて,物性についてさらに系統的に知見を得ていく必要がある。 一方,本研究の途上で,ポリイミドの合成中間体であるポリアミド酸も適切な条件下では水中で分子集合体を形成することが判明し,分子構造と集合体サイズの間に相関が見出された。さらに,側鎖に光反応性部位を導入したポリアミド酸を調製し,水中で形成された分子集合体に光を照射したところ,そのサイズが劇的に減少することを見出した。 今後,本研究の知見を生かした両親媒性ポリイミド・ポリアミド酸の応用面での開発が期待される。
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