研究概要 |
側鎖にかさ高い置換基を有するメタクリル酸エステルは、アニオン重合でだけでなくラジカル重合において、イソタクチックに富むポリマーを生成する。さらに、不斉な条件で重合を行うこと、左右どちらか一方巻きに片寄ったらせん構造を有するポリマーを与える。本研究では、かさ高い置換基を有するメタクリルアミド誘導体(N-[(4-ブチル)トリフェニルメチル]メタクリルアミド(BuTrMAM)、N-[(4-ブチルフェニル)ジベンゾスベリル]メタクリルアミド(BuPDBSMAM))をモノマーとして、ラジカル重合およびアニオン重合による一方巻きらせんポリマーの合成を行うことを目的とした。 1.BuTrMAMおよびBuPDBSMAMのラジカル重合を(+)-メントール、または(-)-メントール中で行った。得られたポリマーは光学活性で、さらに、円二色性(CD)スペクトルの測定を行ったところポリマーの不斉構造に基づく吸収が観測された。これらはポリマーが-方巻きに片寄ったらせん構造を有していることを示唆している。また、BuTrMAMと光学活性なN-[(R)-(+)-1-(1-ナフチル)エチル]メタクリルアミド((+)-NEMAM)の共重合を行った。得られたコポリマーの旋光度とCDスペクトルから、(+)-NEMAMユニットがポリマーに一方巻きに片寄ったらせん構造を誘起したことが示された。 2.有機亜鉛化合物(n-Bu_4ZnLi_2)とハロゲノ糖(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシルブロマイド(Gla-Br))からなる不斉アニオン開始剤を用い、BuTrMAMのアニオン重合を行ったところ、得られたポリマーは光学活性であった。ポリマーのCDスペクトル、および^1H NMRスペクトル、MALDI-TOF-MSスペクトルは、糖残基が一方巻きらせん構造を誘起していることを示唆した。
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