研究概要 |
有機ドナー分子に由来するπ電子と磁性アニオンのd電子が協奏的に相互作用するπ-d系有機磁性伝導体では、単独の物性では発現できない複合機能が期待できる。本研究では、TTFとは異なったπ電子系であるBDYユニットを含むドナー分子と磁性アニオンを用いて、新しいπ-d系磁性伝導体の構築を目指すと共に、X線構造解析により電子構造変化とπ-d相互作用の関係を明らかにすることを目的とした。以下に、主な研究成果をまとめる。 1.反強磁性圧力誘起超伝導体β-(BDA-TTP)_2FeCl_4の圧力下での構造解析により、常圧で開いていたフェルミ面の一部が閉じることを明らかにした。 2.弱強磁性体(BDH-TTP)[M(isoq)_2(NCS)_4](M=Cr^<3+>,Fe^<3+> ; isoq=isoquinoline)の常圧での強磁性転移温度[T.c=7.6K(M=Cr^<3+>,Fe^<3+>)]が、9kbarの圧力をかけることによって、それぞれ上昇することを見出した[M=Cr^<3+>, T_c=16.6K ; M=Fe^<3+>, T_c=11.6K]。 3.β-(BDA-TTP)_4Cu_2Cl_6と(BDA-TTP)_2CuCl_4の作製に成功し、両者の塩が半導体的挙動を示すことを明らかにした。 4.BDH-TTPと磁性アニオンMX_4^<2->(M=Mn, Co; X=C1, Br)を用いて、(BDH-TTP)_4MnCl_4(H_2O)_x、(BDH-TTP)_4MnCl_4(H_2O)_4、(BDH-TTP)_4Mn_<0.66>Co_<0.33>Cl_4(H_2O)_4、(BDH-TTP)_4MnBr_4(CH_2Cl_2)、(BDH-TTP)_4MnBr_4(CH_2Br_2)、(BDH-TTP)_4CoBr_4(CH_2Cl_2)の作製に成功した。これらの塩は、弱い金属的挙動、あるいは4.2Kまで安定な金属的挙動を示した。
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