研究概要 |
非金属元素及び亜金属元素は水溶液中では酸素酸陰イオンとして存在する場合が多い。これらの元素のうち,ヒ素,セレンは窒素を配位子とする化合物と特徴的な化合物を形成しやすい。そこで,キトサンを基材として,o位に-NH_2基を2個もつ化合物を導入した樹脂を新規に合成し,基本的性質(IRスペクトルによる同定,pKa,捕集容量など)を求め,各種元素の捕集挙動をICP-MSで検討した。合成方法は基材としてキトサンを用い,EGDE (Ethylenediglycidylether)で酸や操作時に安定な架橋キトサンを合成した。架橋キトサンにchloromethyloxylaneを反応させてアームを導入し,官能基として3,4-diaminobenzoic acidを導入した。捕集挙動は樹脂をミニカラムに詰めて,バッチ法で行った。その結果,ヒ素,セレンに特異的であることが分かったので,標準試料と環境水試料へ応用して,本樹脂を用いる定量法の正確さと精度について検討した。標準試料を用いた場合の回収率は90%以上となり,十分な結果を得た。樹脂への捕集時にpHを変化させることで,種別分析(スペシエーション)が可能なことが分かり,実際試料として河川水等に応用し,ヒ素(III, V),セレン(IV, VI)の定量ができた。 バッチ式のカラム処理法では,試料の測定に時間がかかるため(1試料20分程度),[これらの前処理濃縮操作を自動化することを試みた。自動化には,シーケンシャルインジェクション分析法(SIA)を用い,コンピューターによりバルブや時間コントロールを行った。また,検出器として,検出感度はICP-MSよりは低いが汎用性の高いICP-AESを用いる系について検討した。自動化前処理濃縮操作の検討には,簡便のため市販のキレート樹脂を市販のフィルターを代用したミニカラムに詰めて用いた。ICP-AESを用いてもICP-MSに劣らない感度を得ることができたので,本自動化前処理濃縮システムは新規に合成した樹脂を用いる定量にも応用可能であることが分かった。
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