研究課題
基盤研究(C)
本研究では過剰発現している異常遺伝子に対しハイブリッドを形成し、その発現を調節するのと同時に、薬剤を放出することで標的蛋白の機能を制御するマルチ制御機能をもつインテリジェント核酸の開発を目的とした。すでに私は標的との2本鎖内で特異的に活性化されシチジンに対して選択的にクロスリンク反応する2-amino-6-vinyl purineを開発している。さらにこの反応中で反応性官能基のマスキング剤に使ったスルフィド基で結合した分子が放出されることを確認している。これらの一連の化学反応を利用し、遺伝子配列特異的な薬物放出システムへの展開を計画した。まずこれらのシステムが細胞内で機能することを確認するために標的遺伝子に対して、ハイブリッドを形成し、薬物が放出されるのを細胞外から検出する方法の検討を行った。平成17年度は脱離するマスキング剤に蛍光基を結合させ、脱離により蛍光が増強することで反応を検出する方法を検討した。しかし、この方法では脱離による蛍光の増強は観測されなかった。そこで平成17年度はFRET現象の利用を計画し、消光団としてダブシル基、蛍光団としてフルオレセインを持つダブル標識機能性オリゴDNAを合成した。これらのオリゴDNAは試験管内で標的位置にシトシンを含む相補的配列のオリゴDNAと混合したときのみ、選択的に消光剤の脱離に伴う蛍光の増強が観測された。さらにこれらの反応をモデル細胞である細胞抽出液中で行ったところ、同様に、標的選択的な蛍光の増大が観測された。またダブル標識機能性オリゴDNAは高いアンチセンス効果を示すこともわかった。これらの結果は、今回合成したダブル標識オリゴDNAを用いて、細胞内においてハイブリッド形成により選択的に進行する化学反応を、蛍光の増強により観測できると期待されるとともに、これらの化学反応が薬物放出システムとしても細胞内で機能する可能性を示したものであると考えている。
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