研究概要 |
金属間化合物はリチウム二次電池の代替負極材料として有望であるが,これを実用化するには充放電サイクル安定性の乏しさを改善する必要がある.我々が注目してきたMg_2Geにも同様の問題がある.この問題は電極の作製方法を工夫することで解決できると考え,ガスデポジション(GD)法に着目し,この手法を用いて銅箔上にMg_2Geを形成させた電極を作製した.この電極の負極特性を,特に高率充放電性に着目して評価した.Mg_2Ge-GD膜(膜厚3〜5μm)電極の第一サイクルにおける充放電曲線より,この電極の充放電プロファイルおよび容量可逆性はバルク状電極(Mg_2Ge粉末を銅網に圧着して作製)のそれとほぼ一致しており,両者の電極反応に違いがないことがわかった.他方,サイクル数の増加に伴う放電容量維持率の変化を見てみると,GD膜電極は200サイクル後においても第一サイクルの約35%の維持率を示し,バルク状電極と比較して著しいサイクル特性の改善が認められた.また,高率充放電性を評価したところ,この電極は1〜3Ag^<-1>の非常に高い電流密度での充放電が可能であることが示された.なお,得られたデータを基にエネルギー密度および出力密度を試算したところ,市販の電池と比較してエネルギー密度ではやや劣るものの出力密度においては格段に優れていることがわかった.さらに,Mg_2Geに機械的にリチウムを添加した試料(Li_xMg_2Ge)を原料としてGD法を行うことにより,初期容量可逆性と安定性の両方に優れたサイクル特性を有する厚膜電極の作製を試みた.リチウム添加量を変えた種々の試料を用いて作製した厚膜電極について充放電測定を行ったところ,バルク状電極の場合とは異なり,リチウムを添加しても初期容量可逆性に顕著な改善は認められなかった.これは製膜時のいずれかの過程で試料が酸化したためと思われる.特にリチウム濃度の高い試料においては,充電曲線に副反応の生起を示す異常が現れていることからもそのことが支持される.そこで,合金粉末をエアロゾル化する際のキャリアガスの純度をより高純度なものに変えてLi添加電極の充放電試験を行った.その結果,放電容量が増大し容量可逆性の向上が認められた.このように,酸化をある程度抑止することができることが示された.一方,GD法により作製したLi添加Mg_2Ge膜電極のサイクル数に伴う放電容量の変化を調べたところ,リチウムを添加することによりその性能を一層向上させることに成功した.
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