研究概要 |
ナノ細孔構造を有する無機半導体(TiO_2系)薄i膜と高分子半導体薄膜とのヘテロ接合型素子における光電変換素子の特性向上のためには、ナノポーラス細孔内における高分子鎖の立体構造および電子状態の解明が不可欠である。本研究では、ナノポーラス細孔に吸着した高分子鎖の電子状態の検討を分光学的な手法によって行った。主鎖共役型のσ共役型高分子であるポリ(ジ-n-ヘキシルシラン)(PDHS)においては,Si-Si結合からなる主鎖のコンフォメーションよってσ共役系電子の重なりが変化し、その電子状態の変化が顕著に現れてくる。PDHSの発光スペクトルにおいては、主鎖コンフォメーションが規則的なトランス構造にある場合と不規則構造にある場合とで、顕著なけい光スペクトルのピークシフトが観測される。このような特性を有するPDHSをTiO_2系やメソポーラスシリカ系の無機化合物のナノ細孔に吸着させ、ナノ細孔の特異的な吸着場が高分子鎖のコンフォメーションおよび電子状態に与える影響を検討した。PDHSのバルク薄膜とPDHS/TiO_2ハイブリッド薄膜のけい光スペクトルおよびその温度変化測定においては、規則構造および不規則構造からの発光強度比の違いが観測された。ナノ細孔吸着試料においては、80Kという低温域においても,不規則構造からのけい光スペクトルが観測された。これは,ナノ細孔に吸着したPDHSとTiO_2ナノ表面との相互作用によって側鎖のn-ヘキシル基が摂動を受け,これによって主鎖のSi-Siのコンフォメーションおよび電子状態が変化するためであることが示された。PDHS/TiO_2ハイブリッド薄膜スペクトルにおいては、PDHSをナノ吸着へ吸着させる条件の影響が観測され、それによる電子状態の制御の可能性が示唆された。また,PDHS鎖中の不規則構造が欠陥サイトとして働き,励起状態の失活が起こることが示された。
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