研究概要 |
高品質な薄膜堆積には、薄膜堆積初期の島状成長やインキュベーション層の形成を抑制する必要がある。そのためには、基板表面の濡れ性を向上させる表面改質処理(親水化処理)が必要である。本研究では、薄膜成長において、インキュベーション層を介在することなく界面から均質な膜の形成が可能な基板表面の濡れ性が制御可能な新規の表面改質とその機構の探求、および、表面改質基板とCVD膜の堆積過程の関係を解明し、良質な薄膜を堆積するための指針を得ることを目的としている。本研究では「アンモニア分解種による表面窒化過程の検討」と「有機液体原料による高品質シリコン炭窒化膜の形成」について調査した。「アンモニア分解種による表面窒化過程の検討」に関しては、加熱Wワイヤの上で生成したNH_3の分解種を用いたSiの表面窒化に関して調べたところ以下が明らかとなった。(1)基板温度:50℃でSi(100)表面は窒化される、(2)SiN層の膜厚は窒化処理初期では直線則に従い,その後,放物線則に従って増加する、(3)水の接触角度測定より,窒化層が初期段階に島状成長によって形成されていくことを明らかにした。 一方、「有機液体原料による高品質シリコン炭窒化膜の形成」に関しては、HWCVD法により非爆発性の有機液体原料であるHMDSを用いてSiN系薄膜の成膜を行い、以下の点が明らかとなった。(1)HMDSのみでもSiCN膜の成膜が可能である、(2)基板温度100℃でのSiCN膜の成膜が可能である、(3)基板温度およびNH_3流量を選ぶことによってSiCNの組成を制御できる、(4)NH_3流量を選ぶことによって比誘電率を2.9から7に制御できる。
|