研究概要 |
GaN, ZnOおよびZnMgOの薄膜結晶におけるヘテロ残留線の斜入射赤外反射と表面ポラリトンの全反射減衰を実験的に調査し,結晶の品質を評価した.いずれの薄膜結晶もMOCVDまたはMBEによってサファイアの結晶基板上に堆積成長させたものであり,GaNはおよそ2μm, ZnOは0.5〜1μm, ZnMgOは0.1〜0.2μmの厚みとなっている. 本研究により,サファイア基板との界面近くでGaN結晶に大きな格子ひずみが残っており,そのひずみが膜厚方向で大きく傾斜していることが初めて定量的に明らかになった.さらにこの傾斜性は直径2インチのディスクの中心部と周辺部とで異なることが判明した.この傾斜性の場所依存性を詳しく調査して格子ひずみの度合いと深度のマッピングを明らかにした. 他方,ZnOでは格子ひずみは膜内でほとんど傾斜していないが,薄い膜では膜全体にほぼ一様に強いひずみを受けていることが分かった.その上,膜厚を問わずキャリア電子がサファイア基板との界面近くの狭い層に閉じ込められているらしいこともプラズモンの性質より分かった.さらにx<0.5のZn_<1-x>Mg_xO/ZnO/Sapphireについても同様の調査を行ったところ,Zn_<1-x>Mg_xO層とZnO層の界面にも縮退電子層が形成されていることが強く示唆された.これは産総研でのHall測定の結果を支持するものである.このような性質と対照的に,ZnOをCVD成長させるとモフォロジーが一変し,メソスコピックな島状結晶が得られる.しかもc軸の値が0.001nmだけ異なるポリタイプが現れる.顕微赤外反射特性を調査した結果,赤外屈折率にも違いのあることが判明した. 以上の結果より,GaNではより効率の高い光ダイオードの作成に向けての課題が明示でき,ZnOについてはp-n接合を作成する上で克服すべき問題が浮き彫りになった.
|