研究概要 |
本研究では,自己相関器内に単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を非線形光学素子として組み込み,超短光パルスの時間幅見積もりに利用することを目的とした,既に顕著な非線形性が確認されている1550nm帯ではなく,短波長吸収域(800,400nm)でのSWCNTの適用をめざした.研究期間内に得た結果を以下の3点にまとめる. 1.SWCNTの光非線形性に対する計測:購入した市販のSWCNT基板に,Zスキャン測定法を適用し,800,400nmにおけるSWCNTの非線形屈折率n_2,非線形吸収係数α_2の見積もりを行った.入力パルス(100fs)の強度を変化させた測定を繰り返すことにより熱的な影響を除去し,波長790nmにおけるn_2,α_2の符号はともに負,絶対値はそれぞれ0.53cm^2/GW,3.3×10^3cm/GWを得た,これらの値は,他の報告例に比して大きいが,SWCNTの1550nm帯での報告値に比べ2桁小さかった,波長395nmにおける測定では,n_2,α_2の符号はともに負で,絶対値はそれぞれ10^<-2>cm^2/GW,102cm/GW程度と見積もられた. 2.半導体レーザーを用いた短パルス光源の開発:SWCNTが持っ離散的な吸収帯(400,800,1550nm)は,半導体レーザーの代表的な発振波長域に一致するため,利得変調した半導体レーザーを本研究用の短パルス光源とするべく,光ファイバ干渉計を用いた新しい線形パルス圧縮法の提案,構築を行い,数値的な検討結果を論文にまとめた. 3.超短光パルスの自己相関測定:SWCNTを含む自己相関器を構築し,フェムト秒パルスに対する自己相関測定を行った.その結果,信号強度は小さいものの強度相関波形を描くことに成功した.これに関連して,自己相関測定におけるフリンジ情報の欠落,雑音問題等について数値的に検討した.
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