研究概要 |
凹最小化問題と逆凸最小化問題の研究を主に行なった.前者は凸多面体上での凹関数の最小化,また後者は1次関数の最小化であるが,実行可能領域が2つの凸集合の差集合であり,いずれにも大域的な最適性のない複数の局所最適解が存在する.通常,局所最適解を列挙する分枝限定法が解法に用いられるが,非線形の場合には2つの深刻な欠点があり,現実的な計算時間で実用規模の問題を解くことは困灘である.一つは,これらのアルゴリズムが実行可能領域を単体や錐に分割し,分割集合上で線形緩和問題を解いて下界値を算定することに起因する.実問題の多くにはネットワーク流などの好ましい構造があるが,実行可能領域の分割で破壊され,効率的なアルゴリズムを緩和問題の処理に利用できない.もう一つは,期待される解が生成される以前に組合せ的爆発を起こしてしまうことである. 以上の観察を踏まえ,問題の特殊構造を重視した新奇の分枝限定法を提案した.主たるアイデアは実行可能領域の分割を止めた点に尽きるが,算定される下界値は著しく劣化する.そこで下界値を引き締めるため,ラグランジュ緩和を用いた安価な手続きを導入した.ランダムに生成した凹最小化や逆凸最小化問題,ネットワーク構造を備えた生産輸送問題に,この手続きが効果的に機能することを確認した.組合せ的爆発の対策としては,凸多面体と凸集合の差集合を実行可能領域とする逆凸最小化問題に対し,既存のものとは全く異なる分枝限定法を提案した.このアルゴリズムは,ピボット演算で凸多面体の辺に沿って局所最適解を探索する.線形計画問題における巡回回避手法であるにブランド規則を逆に利用し,アルゴリズムが各局所最適解を一度だけ探索し,探索済みとなった局所最適解の配列の不要なことを証明した.したがって,大域的最適解は多項式の空間計算量で有限時間のうちに生成される.
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