研究概要 |
本研究課題は、大変形を伴う展開構造物の効率的な展開方法の開発と、その非線形挙動の解析および不安定挙動を回避する安定的な制御方法の開発を主目的としている。 昨年度得られた大変形非線形弾性解析の数値解析結果に関する,ひずみ定義は通常の工学ひずみを用いたが、これを直接理論解析に用いることは数式を複雑化するだけで、特異点発現の本質的な根拠を理解する上では理解しにくい状況にあった。そこで、今年度は、ひずみエネルギーの観点から構造安定性の理論・解析アプローチに重点を置くこととし、変位がひずみのべき関数として近似展開できるものとし、その後の理論解と分岐点解析や分岐パターンを理解する方法を試みた。ひずみの違いによる数値解析結果と理論解析結果のギャップを検証・確認するために、特異点を持つ非線形数値解析(弧長法による静的解析、変位制御法による動的解析、荷重制御法による動的解析)で得られた数値結果と理論解の精度比較を行った。解析評価として解析と実験との検証では、構造物が多段階にフォールディング中に、全部材は無理なく(応)力が伝わっているかを確認するとともに、理想とする経路をたどっているかを調査した。これらの結果を、「工学と数学」や計算力学関連の国際会議で発表を行った。 また、トラスのライズが高くなると、特異性の問題である分岐問題が現れ、構造系がさらに不安定化しやすくなり,構造系全体が急激に耐荷力を喪失させてしまうことがわかった。幾何学的な構造上の差異によって、展開構造のフォールディング状態が異なってしまう場合がある。この制御法は、非線形制御力が必要となるが、釣合い力を解析で求めておくことによって、骨組構造が主経路上の飛移り座屈現象を工学的に利用するものです。この分岐現象が発生することにより、時として構造物がスムーズに展開することができず、制御不能に陥る場合がある。例えば、トラス展開構造において、滑らかに右側に屈曲する部材が、系の分岐点を持つがために、途中で分岐経路をたどったり、分岐点上で挙動がフォールド(フリーズ)してしまったり、屈曲してしまって異なった形態に展開/収納してしまう可能性もある。それが、多段階展開構造になればさらにその複雑性は増加してしまうため、挙動を把握・制御することは大変困難となった。これを回避する一つの方法として、エネルギー最小の原理に基づく崩壊経路の予測から分岐点をあらかじめ探索しておき、適当な初期不整を与えておくことによって、分岐点による不安定化を回避させながら目的とするフォールディングパターンを数値的に,理論的に確認した。
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