研究概要 |
これは形状記憶合金ワイヤの直線に記憶されたものを大小のプーリに架けて、小プーリを真横から加熱したときに生ずる直線への回復力を利用した新しい動力装置である。これは形状記憶合金熱エンジンと称され、原理はすでに一般に既知であるが、本研究のように加熱に高温熱蒸気を利用したものは外にない。蒸気を利用すれば、携帯の加熱装置と組み合わせて車に搭載できるというところが発想の発端である。 これまでにSMAC1号として完成させたものはトルクが十分ではなかった。これを改造してワイヤ本数増、機構改良により、成人を乗せられる2号の完成が目的である。この形状記憶合金利用の駆動方式は研究代表者が開発した独自の画期的なもので、すでにTV,新聞でもそれぞれ2度ずつ紹介された。平成18度は前年度が各諸条件下でのワイヤの特性(回転速度、トルクなど)で多くのデータを収集し発表もしたが、さらに改造し、出力アップのためのさまざまな工夫を考案した。例を挙げると、自動可逆回転装置、ワイヤの二重巻き、出力ノズルロでのノズル加熱で蒸気を120℃にすることによるトルク増加、プーリからのワイヤはずれ防止策、本来、溶接できないNiTiワイヤの効果的な機械的接合法などである。これらのいくつかはさらに検討を加えることにより、特許申請の可能性もあろう。 さらに、この原理を利用した動くオブジェを作製した。平成18年度、「うすき竹宵」という大分県臼杵市で11月に行われる観光イベントへ出品演示した。これは竹と明かりがメインテーマで、このオブジェは闇の中で多くのろうそくが華麗に回転、逆回転して幻想的な雰囲気であたりを包み、多くのカメラマンのフラッシュの的となった。 研究成果としては3件、雑誌に掲載され、口頭発表は2件である。当然であるが継続していくにつれ新しい知見が得られ、それによる加速が研究の励みとなった。
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