研究概要 |
本研究では頚・脳動脈用マイクロステント開発のために,構成材料の基本的変形特性と変形に伴う微視的組織変化を詳細に把握し,これに基づく有限要素法による構造解析手法について検討し、以下の結論を得た。 1)マイクロステント構成材料の基本的力学特性の把握 i)初期負荷を伴う変形特性の解明:初めに圧縮負荷(初期負荷)を与えた後に引き続き引張変形試験を行い、ステント構成材料としてのCPチタンおよびSUS316 L材の塑性変形時の負荷方向依存性を明らかにした。 ii)粘塑性変形特性の把握:CPチタンおよびSUS316 L材の引張り変形時の応力-ひずみ関係に対するひずみ速度効果、さらに、クリープ変形特性を明確にした。 2)変形と表面性状との関連性評価 i)表面性状観察:表面観察が容易な矩形試験片を用い,ひずみ範囲およびひずみ速度を変えた引張,クリープ,応力緩和,粘塑性ひずみ緩和試験をそれぞれ行った。表明性状と変形特性との関連性を定量的に確認でき、CPチタンはSUS316L材の表面性状の違いを明らかにした。すなわち、CPチタン材の表面性状はクリープ試験と引張り試験により異なるが、SUS316L材の表面性状はクリープ試験と引張り試験により差が出ないことを明確にした。 3)有限要素法によるステントの変形解析 i)有限要素法による拡張変形解析:ステントの網目構造を変化させることにより、ステント端(変形を制御可能であることを明らかにした。 ii)ステント構造の周期性を利用した有限要素解析法の提案:ステントの構造周期性を利用した解析手法を提案した。これにより、最小単位の代表的要素をのみを計算することにより、ステント全体の変形特性を知ることが可能になり、今後行う予定であるステントの結晶構造を考慮した解析に対して大いに有効であることが示された。
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