研究概要 |
SPring-8のBL14B1とBL28B2において得られる高エネルギー白色X線を用いて,材料内部の応力測定に関する基礎的な実験を行った.試料にはオーステナイト系ステンレス鋼SUS304Lと溶接構造用高張力鋼板WEL-TBN780E (JIS G3128 SHY685)をG型の試験片に加工し用いた.試験片に曲げ応力を負荷し,透過した回折X線のピークエネルギーの変化率から直接負荷方向のひずみを求めた.負荷ひずみはひずみゲージを用いて測定した.測定精度に影響を及ぼすと考えられるいくつかの要因を調査した.それらの因子は結晶粒径,照射ビーム径,照射時間,回折プロファイル形状,回折X線ピーク強度,Bragg角などである.以下に得られた結果を示す. (1)60〜150keV程度の高エネルギー白色X線を用いれば,厚さ5〜15mmの鉄鋼材料に対し,透過した回折X線を内部ひずみ測定に利用できる. (2)ゲージ体積内に5000個以上の結晶粒が含まれるように設定すれば,十分な測定精度が得られる. (3)高エネルギー側の回折を利用し,カウント数をより高くして回折プロファイルをできるだけガウス曲線に近づけると測定誤差は減少する. (4)SHY685材の高エネルギー白色X線を用いた内部ひずみ測定では,100keV付近のα-Fe 321回折線を利用することでもっとも精度の良い測定が可能である. (5)γ-Feの複数の格子面のひずみ情報を同時に利用すれば,オーステナイト系ステンレス鋼においても測定精度の向上が達成できる. (6)高エネルギー白色X線はミリメーターオーダーの材料内部のひずみ測定に有効であることを確認した.
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