研究概要 |
関節の接触領域および圧力分布は,関節の安定性を評価するうえで重要な情報である.これまで関節の接触領域や圧力分布を測定するために,ヒト切断肢を用いた生体外(in vitro)の研究が多く行われてきた.ヒト切断肢を用いた実験は,種々の条件でシミュレーションが可能である反面,関節負荷や筋収縮力等の設定により結果が左右され,臨床的意味づけが難しいという問題がある. このようなことから本研究では,非侵襲的であるという大きな利点を持つMRIを用いてin vivoにおける足関節(距腿関節)や膝関節(脛骨大腿関節および膝蓋大腿関節)の接触領域および3次元運動を連続的に測定した.特に本研究では立位を想定した荷重装置を作製し,荷重下における実験・解析を行った.距腿関節については,成人5名の被験者を対象に実験を行い,以下のことがらを明らかにした.1)距腿関節面の接触領域分布が背屈時には前方へ移動し,底屈時には後方へ移動する傾向を三次元的に示した.2)非荷重下,荷重下共に接触面積は中立位で最大となり屈曲角度の増加に伴い減少する傾向を示した.3)200Nの荷重に対して接触領域は接触割合で平均5.7%増加した.膝蓋大腿関節については,10名(男性5名,女性5名)の成人健常膝関節を対象にMRIを用いて生体内における膝屈曲角度変化に伴う膝蓋大腿関節の接触面積および3次元接触領域分布の変化について検討した.膝屈曲角度が0〜90°と増加するに従い,膝蓋骨関節面の接触領域分布は,遠位側から近位側へ移行する傾向を3次元的に示した.男性の関節接触面積の平均値は女性に比べて,いずれの屈曲角度においても高く,屈曲角度の上昇に従い男女ともに接触面積は増加する傾向にある.また,接触面積を簡易的な膝蓋骨関節表面積で除した値で正規化すると,いずれの屈曲角度においても有意な性差は認められないこと等を明らかにした.
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