研究概要 |
TiNi形状記憶合金は現在各種産業分野,さらには医療分野に至るまで幅広く実用化されている.しかし,それらの殆どは線材あるいは薄板材としてのみの利用に限られている.その理由として,TiNi形状記憶合金特有の難加工性と鋳造時における重力偏析による材料不均一という大きな二つの問題が解決されていないためであった.そこで本研究では,重力偏析の起こらない均質なインゴット作製のために最近開発された燃焼合成法を採用し,形状の制限を解決し任意形状の製品作製のために精密遠心鋳造法を試みた.この新しい製造技術により作製したTiNi形状記憶合金の機械的性質(擬弾性特性,形状記憶特性,防振特性などなど)およびそれらの温度特性を系統的実験により調べた.また,これらの力学的特性を裏付けるため,種々の金属学的観察・評価(各種顕微鏡組織観察,化学分析:XRD, DSC)を行った.これらの結果から,この新しく提案した手法により製造されたTiNi形状記憶合金は,十分に実用化に耐え得るものであり,この新しい合金を用いた,これまでに無い複雑形状の形状記憶合金製品開発により更なる産業応用が広まるものと考える.これが平成17年度の成果であるが,平成18年度では,ここで得られた実験結果のより詳細な検証を進め,信頼性を確認すると共に,さらに(1)この新しい形状記憶合金の更なる機能改善,(2)この新しい合金の回復応力の大きさの系統的な実験による検討,(3)この新しい合金の熱・力学特性の金属学的・熱力学的検討を行った.このほか,複雑形状を持つ形状記憶合金の作製の例として,企業・医学部との共同研究において,整形外科領域において使用する骨折治療用体内固定具メネンプレートの開発を試みた. 以上,本研究により,任意形状のTiNi形状記憶合金が高性能で作製可能であることが示され,このユニークな特性を持つ新素材の更なる興味ある産業応用が期待された.
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