研究概要 |
本研究は,生分解性樹脂複合材料を用いた高機能スカフォールドを歯科領域に応用することにより,自分の歯を温存できる新しい治療技術の実用化のための技術の確立である.スカフォールドに播種した骨芽細胞様細胞による骨成形過程と生分解過程をin vitroでの観察結果から,組織再生に最適なスカフォールドの設計指針を得ようとするものである.3種類の生分解性樹脂を用いて製作したスカフォールドによる研究結果は次のように要約される. ・これまで困難であった,75%/25%の質量比率のPLAとPGAの共重合体樹脂であるPLGA樹脂の繊維による織物構造体に,50%/50%質量比率のPLGA樹脂をバインダーとして複合材料を作成しスカフォールドとすることが出来た.これにより生分解速度の速いスカフォールドを作製できた. ・マウス骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1,RikenBRC)を用いた6週までの細胞培養実験では,細胞数であるDNA量はPLA繊維-PCLバインダー系や,PLA繊維-PLGAバインダー系のスカフォールドと比較して大差はなかった.また骨形成マーカーであるALP活性は,PLA繊維-PCLバインダー系のスカフォールドと比べて大差なく,骨基質形成に対する活性は材料依存性を示さなかった. ・PLA繊維-PCLバインダー系のスカフォールドでは,PLGAバインダーは120日で完全に分解したのに対して,PLGA繊維-PLGAバインダー系のスカフォールドは,4週の培養以後では分解により強度は殆どなかった.またカルシウム量も小さく,骨組織形成時には強度の保持が必要なことがわかった.
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