研究概要 |
イオンミキシング蒸着法により成膜パラメータを変化させて様々な条件でBN薄膜を作製し,薄膜の表面・断面形態,組成,化学結合状態,結晶構造,硬度および体積抵抗率に及ぼす成膜パラメータの影響を明らかにした.成膜パラメータとして,輸送比,加速電圧,イオンビーム照射角度,基板の結晶方位および基板温度を考慮し,cBNの最適成膜条件を検討した.FT-IRによる結晶構造解析結果から,低加速電圧および高輸送比の条件においてcBNとhBNの混合相となり,また非常に高い硬度を示すことが明らかになった. 次に,BN薄膜に生じる内部応力をニュートンリング法により評価した.マイケルソン型干渉計を装備する光学顕微鏡を用い、薄膜に発生したニュートンリングを撮影した.その結果,cBNとhBNの混合相が生成する条件下において内部応力が増大することが明らかになった. さらに,分子動力学法によるシミュレーションを実施し,内部応力の発生機構を検討した.第一原理分子動力学解析コードVASPを用いたBN結晶構造の電子密度計算の結果,BN結晶構造の結合状態には角度依存性があり,経験的多体ポテンシャルであるAlbeポテンシャルによりBNの結晶構造を忠実に再現できることが明らかになった.hBNをターゲットとして加速した原子を照射するシミュレーションを実施した結果,照射された原子がhBNのbasal plane間を橋渡しした状態でsp^3結合を形成する様子が確認できた。さらに,Parinello-Rahman法により定圧下での緩和計算を実施した結果,相変化に伴う系の体積増加が確認できた.以上のことから,cBNが生成する条件下において内部応力の増大は,sp^3結合を形成する際の系の体積変化に起因すると考えられる.
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