研究概要 |
木材を大きく,3つの階層構造に分け,それぞれのレベルにおいて,機械的性質と強度の測定を行い,その結果に基づいた解析を行った. マクロレベルからメゾレベルのスケールとして,木材の年輪を形作る早材と晩材別の縦弾性係数の測定法を開発した.この手法では,木材試験片を年輪に平行に削り出しながら,引張試験や曲げ試験を行う.木材試験片の幅と得られた平均的縦弾性係数の関係より,理論値との差を最小にする早材部と晩材部の縦弾性係数を同定する.比較的早材と晩材の区別がはっきりしている杉を用いて,提案した方法により縦弾性係数を求め,提案した方法の妥当性を検討し,簡便,高精度に早材,晩材別の縦弾性係数が求められることが分かった. ミクロ,メゾレベルの性質としては,ナノインデンテーション法を用いて,ナノレベルの押し込み試験を行い,早材,晩材部それぞれにおいて押し込み試験から縦弾性係数を測定し,マクロレベルと同程度の縦弾性係数となることが分かった. シミュレーション手法の開発としては,木材の熱圧延に着目し,有限要素法を用いて温度や押し込み量,押し込みスピード等の様々な条件化でシミュレーションを行い,木材の機械的性質が実験等の何らかの手段により与えられれば,実用上十分な精度でシミュレーションが出来ることを示した. 3年間の研究では,当初計画した段階までいたる結果は得られなかったが,木材の機械的性質を解明する手法の検討は十分行われた.今後,ここで得られた成果をもとに,さらに地道な測定を行うことにより,種々の木材のミクロ,メゾ,ナノレベルの機械的性質を明らかにし,木材を利用するための基礎的研究を行うことが出来る.
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