研究概要 |
本研究はAZ61マグネシウム合金押出し材を用い,塑性加工の中でも寸法精度が高く,直接製品の最終形状が得られる温間精密鍛造に注目した.鍛造品の機械的性質と集合組織との関連性を解析し,マグネシウム合金の塑性加工に関する新たな知見を得て,今後の使用拡大への貢献に寄与することを目的とする. マグネシウム合金の鍛造においては,押出し材などの一次加工を施した供試材を用いるのが一般的であるが,本研究では生産プロセスの簡略化の観点から,押出し材だけではなく鋳造材においても鍛造を試みた.本研究では精密鍛造において研究例が極めて少なく,管継手,バルブボディなどの実部材への適用範囲が広いT型鍛造品の最適鍛造条件を見出し,さらに,温間拘束時に初期結晶方位の影響による不良現象についても考慮し,マグネシウム合金における鍛造性を評価した. その結果,以下のような知見が得られた. 1)T型成形試験において,鍛造温度463K,押込み速度14mm/minで,割れ・不良現象が発生することなく成形が可能であった. 2)押出し材温間拘束圧縮時における不良現象は初期集合組織状態に依存し,押出し軸方向に圧縮すると,加工面に結晶の底面が揃っている場合のみ発生した. 3)鋳造材のT型成形は483Kにおいて押出し材の3倍以上の速度で成形可能であった.成形後の硬さ,圧縮強度ともに良好であるため,今後鋳造材を用いた鍛造技術が期待される.
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