研究概要 |
光学ガラスの延性モード研削をダイヤモンドホイールで実現するためには,砥粒切込み深さを臨界切込み深さ以下に設定しなければならない.そのためには,砥粒切れ刃先端をホイール作業面に揃える切れ刃トランケーション法に注目し,砥粒切れ刃の切削性能と工作物物性の因果関係を単粒切削実験により解明し,光学用硬脆材料研削に適した切れ刃形状および先端平坦部の最適値を見出すことを目的として課題を遂行した. 1)単結晶ダイヤモンド砥粒を用いた単粒切削実験において,SD46砥粒切れ刃の負のすくい角が35〜90°に分布する場合,臨界切込み深さは60〜160nmとなる.臨界切込み深さは負のすくい角の増加とともに減少し,ダウンカットに比べてアップカットのほうが20nmほど大きい値を示すことがわかった. 2)硬脆材料の微視的変形挙動特性を理解するために,各種光学材料のナノインデンテーション試験を行い,押し込み荷重とクラック発生機構,弾塑性的挙動の関係を調査した.その結果,押し込み荷重が同一ならば,最大変位量は球圧子よりビッカース圧子のほうが大きく,クラック発生押し込み荷重はビッカース圧子よりも球圧子のほうが大きい値を示した. 3)研削加工のモンテカルロシミュレーションによって研削機構に及ぼす切れ刃トランケーションの影響を理論的に考察した結果,わずかのトランケーション量であっても研削仕上げ面粗さは飛躍的に向上し,最大砥粒切込み深さは切れ刃トランケーション量の増加にともなって減少し,やがて,ホイール粒度と集中度によって決定される固有値に収束することがわかった, 4)石英ガラスのような硬脆材料の場合,研削仕上げ面粗さは切れ刃切削高さの一定化,切れ刃形状の平坦化の他に,最大砥粒切込み深さの減少という相乗効果によって向上する.したがって,延性モード研削を実現するためには,切れ刃トランケーションの他に,砥石切込み量と工作物速度を適正に選定することが重要であることがわかった.
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