研究概要 |
本研究では,磁界を用いて配向した短繊維で強化したマイクロ部品を光造形法によって製作することを目的としている.その方法を以下に述べる.液体の紫外線硬化樹脂と強磁性体の短繊維を混合する.この混合物に磁界を印加すると,強磁性体の短繊維の両端は分極し,磁力線の方向に短繊維の長手軸方向が配向する.この状態で混合物の表面上を紫外線レーザービームによって照射して所望の形状に樹脂を硬化させる.以上の工程によって,方向を揃えた短繊維で強化したマイクロ部品を製作することができる. 最初に,本方法によって配向が可能であることを理論的に検証した後に,造形を行う装置を設計,製作し,配向実験および樹脂硬化実験を行った.強磁性体の短繊維としては,長さ0.32μm,直径0.04μmの磁性酸化鉄を使用した.この磁性酸化鉄を液体の紫外線硬化樹脂に混合すると,短繊維は微小であり,液体樹脂の粘度が高いために,短繊維はほとんど沈降しないことを計算の上で確かめた.次に,短繊維と液体樹脂の混合物に一様磁界が印加されると,短繊維の長手軸が磁界方向に向くようにモーメントが作用することも計算の上で確かめた. 以上の検討を行った後,造形装置を製作した.造形部分を囲んで水平面内の周囲4方向と底面に電磁石を設置した.電磁石は自作し,鉄芯には高い透磁率を有するパーマロイを使用した.製作した造形装置によって短繊維を配向できることを確認し,配向時間を短縮するための条件について検討を行なった.これらの結果を利用して,面内で方位制御された短繊維で強化した簡単な構造物の造形を行った. 次に,その内部で短繊維を配向した紫外線硬化樹脂を積層する実験を行った.積層した樹脂の厚さは20μm程度である.現状では,積層数は2であるが,顕微鏡観察により,それぞれの層において,設定した方向に配向していることを確認した.
|