研究概要 |
環境制御型高速切削試験機の設計開発を行い,また静水圧依存型の降伏条件であるDrucker-Prager降伏条件を導入した動的熱弾塑性FEM切削シミュレータを開発しシミュレーションを行った.設計開発した環境制御型高速切削試験機は,微小な切削工具を内蔵した飛翔容器を圧縮空気により加速させる空気銃型の試験機である.切削環境が切削機構に及ぼす影響を検討するため,切削環境は大気,真空,特定ガスなどに制御できる機構とした.微小な超硬P20工具を内蔵したナイロン樹脂製の飛翔容器の質量は15gであり,加速用の圧縮空気を0.99MPaにして3m加速させると,最高切削速度150m/s〜200m/sの高速切削過程を実現できるものである.なお切削距離は60mmである.切削機構を解析する上で重要なせん断角を把握するため,切りくずは,飛翔容器の前方のキャップの内に格納する機構とした.切削終了後,飛翔容器に格納した切りくずと工具切れ刃を,切削過程以外の変形や損傷無しに回収するため,飛翔容器を減速させるように圧縮空気を噴射する停止システムを構築した.加速用と減速用の電磁弁の制御はPCで行う.本研究で開発した環境制御型高速切削試験機は,特許出願した.一方,静水圧依存型のDrucker-Pragerの降伏条件を導入したFEM切削シミュレーションの解析結果より,Drucker-Prager体では切削速度に拠らず刃先の極近傍に非常に高い静水圧分布が発生する.刃先近傍に発生する静水圧の大きさはDP値と相当塑性ひずみの大きさに依存する.切りくず断面の自由面側に沿って有効応力の分布を見ると,工具接触側が高く,自由面側が低い.これは工具側の加工硬化係数が高いため,塑性波速度が速いことになる.これより,Drucker-Prager体では二種類の塑性衝撃波が発生する.一つは,von Mises体の場合と同様に,切削速度が被削材の塑性波伝播速度を超えた場合にせん断塑性域全域に発生する塑性衝撃波,もう一つは,切削速度によらず刃先の極近傍に発生する塑性衝撃波である.
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