研究概要 |
燃料噴射や化繊に代表されるノズルは,ステンレス鋼,高速度鋼(ハイス)および超硬合金などで作製されている.ビッカース硬さHV1400程度とハイスより約2倍も硬い超硬合金は,耐熱性や耐摩耗性に優れており,その加工方法として,研削や放電加工などが挙げられる。一般的に,超硬合金に微細穴を加工する場合,ワイヤ放電加工が多く用いられている.しかしながら,超硬合金をワイヤ放電加工した場合,その加工面にはクラックや微小穴などの表面欠陥が生じ,これらが材料の強度を著しく低下させている.したがって,できるだけ表面欠陥を除去することが望ましい. そこで本研究では,ワイヤ放電加工された超硬合金微細穴の表面欠陥を完全に除去するために,酸化現象を用いた超硬合金放電加工面の表面改質技術と流動砥粒による研磨とを結びつけた複合研磨法を新たに提案する.はじめに流動砥粒を用いた研磨装置を試作し,次に,複合研磨法を微細穴の研磨に適用することによって,微細穴内面を表面欠陥の全く存在しない健全な状態に改質することを目的として,複合研磨を行った.その結果,以下の結論を得た. (1)超硬合金微細穴内面の表面欠陥層を酸化させ,その酸化層に流動性砥粒を流すことにより,酸化層を除去する複合研磨法を考案した. (2)ワイヤ放電加工された超硬合金微細穴に,複合研磨法を適用することによって,わずか10分という研磨時間で,表面欠陥の全く存在しない,健全な面を得ることができた. このように,本複合研磨法は放電加工による表面欠陥を除去する新しい手法であり,今後,各種ノズル材料などをハイスから超硬合金へ転換する有用な技術になるものと期待される.
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