研究概要 |
本研究では,塑性加工の可能なグリーンコンポジット(Green Composites,以下'GC'と記す)の開発を目指し,強化材にラミー平織布,マトリックス材に生分解性樹脂フィルムを用いたテキスタイルGCを作製した.そして,平織布の性質を決定する構成糸の撚りや織物密度が,テキスタイルGC材の機械的性質に及ぼす影響について調査した.さらにこのように得られた知見に基づいて深絞り加工を実施した.以下に主な結論を要約する. (1)平織布構成糸の織物密度によって平織GC材の機械的性質は大きく変化する.すなわち,緯糸数を増加させることで平織GC材の強度および剛性は増加し,破断ひずみは減少する.また,経糸数を増加させることで平織GC材の破断ひずみは増加し,強度および剛性は低下する. (2)平織布構成糸の撚りの程度により,平織GC材の機械的性質は大きく異なる.すなわち,撚り数の増加は平織GC材の強度および剛性を増加させ,破断ひずみを低下させる.ただし,弾性率の増加は平織GC材のみで確認されることから,平織GC材固有の性質と考えられる. (3)ラミー麻単繊維は100〜130℃にて引張強度が大きく低下する.しかし,高温暴露後の常温下における引張強度は変化しない. (4)高温下において平織GC材は,より大きな塑性変形能を発揮する.つまり,マトリックスの流動性が増し,平織布の織縮みの変形・拡張が効果的に発揮される.また,本研究の範囲では100〜130℃の塑性加工温度が適正と考えられる. (5)ラミー平織布に対するマーセル化処理は,平織GC材に大幅な延性を付与させることから,塑性加工に適用できることが判明した. (6)以上のことから,平織布構成糸の織物密度および撚り数は,平織GC材の変形挙動や機械的性質を支配する重要な因子であると結論付けられる.また,塑性変形能の大きい平織GC材は,実際に深絞り加工することができ,今後の発展が期待される.
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