研究概要 |
本研究では,一軸回転体の多品種少量生産に適した新しい精密加工技術を開発することを目的に,平面研削盤を利用した超音波レギュレートセンタレス研削法を開発した.この方法は,金属弾性体(SUS304)に圧電素子(PZT)を貼り付けた構造となっている超音波シューを中心としたセンタレス研削ユニットを平面研削盤上に搭載し,工作物をシューとブレードによって支えてシューの超音波楕円運動によって回転制御しながら,ワークテーブルの左右送りによって接線送り式センタレス研削を行うものである.超音波シューは,通常のセンタレス研削における調整砥石の役割を果たし,これによって調整砥石の駆動装置や成形装置が不要となり,省スペース化,小型化,そして高精度化が見込まれる.L1B2型およびL1B4型の超音波シューを中心としたセンタレス研削ユニットを設計・製作し,動作確認や性能評価を行った後に,平面研削盤上に搭載して研削テストを行った.本研究の内容とこれまで得られた結果を次のようにまとめる. 1.FEM解析によって超音波シューの詳細設計を行った.楕円振動を発生させるためLモードとBモードの共振周波数の差が最小となる最適な寸法がL1B2型ではt_2=11.8mm,L1B4型ではl_2=96.95mmであると求めた. 2.実際の製作誤差などを考慮して,L1B2型とL1B4型についてそれぞれ解析値を基に寸法の異なる3種類ずつの超音波シューを製作した. 3.FEM解析と製作した超音波シューの共振周波数にはL1B2型,L1B4型でともに相違が見られたが,これは加工実験には充分使用可能な範囲であり,加工や圧電素子の接着などの製作誤差や解析誤差によるものである. 4.製作した超音波シューにおける,LモードとBモードとの共振周灘の差は,L1B2型ではt_2=11.8mm,L1B4型ではl_2=96.45mmのシューが最小であった. 5.製作した超音波シューについて,レーザドップラ振動計を用いた確認実験によって,超音波楕円運動が確認でき,また電圧の増加に伴い,楕円の径が大きくなることもわかった.さらに,印加電圧の周波数や位相差の変更による楕円運動への影響をも明らかにした. 6.超音波シュー,ブレード,ダミー砥石からなる試験装置によって,工作物回転試験を行い,その結果,電圧の増加に伴って,工作物回転速度が上昇することを確認した.また,ダミー砥石の回転速度による影響を調べた. 7.平面研削盤上に搭載してセンタレス研削加工実験を行い,超音波シューの楕円運動による工作物の回転が確認でき,工作物表面の研削を実現した. 8.センタレス研削加工によって,工作物の真円度が研削前の○23.9μmから研削後の○8.1μmに向上した. 以上の結果より,本研究において提案したセンタレス研削盤不要な新しいセンタレス研削法が妥当であることが明らかになった.今後,加工条件の最適化と真円度生成過程の理論解析を行うことによって,本加工法の高精度化と実用化に至ると考えられる.
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